ある一般産業機械装置メーカの I 社長と
弊社小川との会話内容抜粋(第3回)です


・・・第2回から続きます


―― 「滑りネジ」を使用する理由 ――
I 社長 使い易さ、価格の両面で、サーボのビジネス・チャンスを見つ け、果敢に挑戦している小川社長には頭が下がりますが、 わたしの一番興味のある点、小川社長のこだわり(?)、多分コストの問題かと思いますが、「ボールネジ」ではなくて、「滑りネジ」を使用している事、 それと「ラダー言語に代わって見えるコントローラ」の開発経緯、メリットなどについて差し支えなかったら教えて下さい


小川
なぜ「ボールネジ」ではなくて「滑りネジ」使用のシリンダなのか?
というあたりから説明します
「ボールネジ」に比べれば「滑りネジ」の価格は確かに安いと思いますが、「ボールネジ」が絶対必要でコストの問題だけなら海外からの調達も考えられる訳で す。
もっと重要な事は、「空圧シリンダ代替」を開発の基本コンセプトとした関係で、「直動の移載」と「クランプ動作」の2つの動作が可能な事、 特に「クランプ」の場合は、工程変更が行われない状態で長い時間使用され続けることが解っていました。 つまり、 「ネジ−ナット」 の関係で見れば、同じ個所で毎回締め付け動作が繰り返されるわけです。

「点接触」で締め付けるか、「面接触」で締め付けるか、
どちらが良いか考えた場合、技術的に「面接触」である「滑りネジ」しか選択できなかったわけです。


I 社長 「ボールネジ」も優れている点は数多くあると思うのですが?




小川
おっしゃるとおり、大変優れた 「回転−直動変換機構」 であることは充分に認識しております。 サーボ屋時代はすべて「ボールネジ」を使用していた経験がありますので、優れている点、弱い点は充分に認識しているつもりですし、 「ボールネジ」が劣っていると言っている訳ではありません。例えば、
優れている点
摩擦抵抗が極めて小さい、つまり、力の変換損失が少ない、という点
弱い点
衝突や金属疲労による軌道面のキズに対して極端に寿命が短くなる点
だと思います。



I 社長
「ボールネジ」の優れている点、弱い 点、をお聞きしましたが、「滑りネジ」は磨耗しませんか?
磨耗現象でナットが「やられる」と言われている「滑りネジ」をなぜ採用されたのか?疑問が残るのですが?
品質保証が可能なのですか?




小川 摩擦の教科書に、2つの物をこすり合わせた場合の 右肩下がりの「磨耗限界曲線」という図が出ています。簡単に言うと、 【 面圧−摺動速度 】の関係を表した曲線で、「磨耗限界曲線」の内側で使用される「滑りネジ」は「磨耗しない」ことになっています。 言い換えると、「流体潤滑」の条件を維持できるような摺動条件が設定できるなら「滑りネジ」でも磨耗して、なくなってしまうことは防げる訳です。

機械の理論から上記のような事が言える訳ですが、これだけでは、シリン ダを構成する事はできません。



I 社長 と言いますと?




小川 ネジ−ナット を駆動するサーボモータの 「トルク−回転速度特性」 が重要な意味を持っております。
ダイアディックシステムズのサーボモータの 「トルク−回転速度特性」 は「右肩下がり」で、汎用サーボモータの 「トルク−回転速度特性」 は「矩形の形」をしております。
この組合せがキーポイントで、「磨耗限界曲線」と「右肩下がりのトルク−回転速度特性」を組合わせる事で、 「磨耗限界曲線」の内側で使用できるシリンダ が構成できる事になります
防衛の意味でこのあたりのポイントを押さえた技術は特許申請しております。

品質保証の点では、業界唯一「「走行距離 1万キロ 保証」を仕様化させて
いただいております。





第4回に続きます・・・