ある一般産業機械 装置メーカの I 社長と
弊社小川との会話内容抜粋(第1回)です



―― 「化石」の時代 ――



I 社長 最近のダイアディックさんの物言いは、かなり過激になってませんか
例えば、

「現在の一般産業機械の技術に対して、「化石」の時代

と言うような、聞き捨てならない表現がみられますが・・・
私どもも、他社に負けないように新しい技術を取り入れてきたつもりですが




小川
それほど深い意味はないですよ

例えば、空圧シリンダとラダープログラムを使用したシーケンサが基本技術と して現役で、業界で広く使用され、根強いことに対する驚きと皮肉ですよ
(こんな事言うと、夜の町を歩けなくなってしまいそうですが)

世間一般では「技術は日進月歩」とか、IT業界では「ドッグイヤー」 などと言われていますが、分野が変わると、50年前の技術がそのまま使われており制御技術屋からみた素朴な驚きを言葉にした ままです




I 社長 確かにわれわれも、空圧シリンダやシーケンサを数多く使用して いますが、なぜ一般産業機械分野で長い間使われているとお考えですか?




小川
幾つかの理由が考えられると思います




1 サーボの技術屋が一般産業機械分野 はユーザとして真剣に考えていなかった事
2 サーボ技術が未完成であった事
3 空圧機器メーカの企業努力

等が主な理由ではないでしょうか




I 社長
小川社長の中ではもう分析が終わっています ね、少し簡単に説明して下さい



小川 この会社を作る前ですが、25年間サーボメーカにおりました

その当時、一般産業機械メーカからサーボの引き合いが来た場合、
「一見の客」か? 
軸数/月は? 
この2つの条件でユーザ選択を行っていました。
ユーザ側でサーボを使いこなせる技術を持っているか?
単発でなく、繰返しの需要が見込めるか?

これらの条件を満たさない場合は、いけないこととは承知の上で、技術サポー ト費を見積りに加えて、営業より出させておりました
当然、ビジネスは流れてしまいます

これは、特定のサーボメーカに限定されたビジネス手法ではなく、大手サーボ メーカのほとんどで行われていたと思いますよ

これら一般産業機械ユーザの180度対極にいた顧客が、NC工作機械 メーカ、ロボットメーカ、 半導体周辺装置メーカで、一度決まれば、リピートオーダが期待でき、 使用軸数も大変多いですから、少々無理な顧客要求にも無償で対応します。
顧客要求に「おんぶに抱っこ」、 「お客様は神様です」でサーボメーカは対応していたわけです。

サーボメーカの市場差別化対応が現在のサーボ市場普及率を決めていると 思います。




I 社長 なるほど、そういうからくりがあったのですか
まったく知りませんでした
サーボ技術が未完成と言っていますがそれについても、説明してください



小川 20年前から現在までほとんど変わっていないと思いますが、サーボを使いこなすためには
◆ サーボメーカの無償技術サポート
◆ 機械メーカ内に「サーボ使いの職人」がいる
ことが条件でした。
つまり、専門職の人間だけが扱える特殊技術であったわけです

言い換えれば、「誰でも使えるシロモノ」では全くなかったわけです

特定業種のユーザ対応をしていきますので、特定業種の機械だけに要求される 性能競争にサーボメーカは明け暮れていたわけです。
ただそれも行き詰まり、ここ数年は、サーボの技術競争は目標を失って漂流している状態だと思いますが

従いまして
一般産業機械業界から見たら「サーボモータは価格が高い」、「サーボモータは簡単には動かない」、「買っても面倒を見てくれないサーボメーカ」と言う訳 で、 「出来るだけ使いたくない」と言う業界常識が出来たのは全く当然なことと思います

よく例えで、社内の技術屋に話すのですが、写真技術との対比で見てみると、 良くわかると思います。
私の子供の頃、田舎の小さな町には写真館が1軒しかなく、幼稚園、学校の卒業写真はすべて、写真館の「おじさん」が来て、「はーい、鳩が出ますよ」 「バッ」(マグネが燃える音)「パシャ」とマグネシュームを焚いて撮っていました。
つまり、当時の写真技術はプロの「職人技」で「素人」が手の出せるものではなかったわけです。

反対に、最近の「使い捨てカメラ」になりますと、誰でも「写真が撮れる」
ところまで写真の技術が進歩したわけです。50年の技術の進歩があの
「使い捨てカメラ」には詰まっているとも考えられます。

サーボ技術との関連で見れば、従来のサーボは「職人」のみがいじれるもので あり、弊社のサーボを動かすためには「職人の技」は必要としていない、つまり、「使い捨てカメラ」と同様、誰でも動作させることが可能であるように工夫し てあります。

サーボ技術も、「使い捨てカメラ」のカメラのように「誰でも使えるシロモノ」に ならないといけないと思います




I 社長 言われてみれば、確かにそうですよね


空圧機器メーカの企業努力についてはわたしも頭が下がります




小川 サーボメーカと空圧機器メーカのユーザ対応は違いますよね
自動化、省力化のユーザ要請が時代の波として、一般産業機械業界に押し寄せるなかで、
機械の動力選択肢の中で比較的簡単に空気が手に入ったことと、扱い易かったこと
空圧機器メーカが企業努力でユーザ要求を取り込んで対応していった
という要因 が合わさって、 空圧万能の時代が形成され現在まで継続していると思います。

第2回に続きます・・・